男「紙を40回ぐらい折ると月まで届くらしいぞ」女「絶対ウソだよー！」

男「満月だな」

男「そういや、こないだネットで見たんだけど……」

男「紙を40回ぐらい折ると、月まで届くらしいんだ」

女「えー、絶対ウソだよー！　届くわけないってー！」

男「いやでも届くらしいんだよ、理論上は」

女「じゃあ今、ポケットに紙が入ってたからやってみせてよ！」

男「いいよ！」

男「1、2、3、4……」ｵﾘｵﾘ…

女「ホントだ！　すごーい！」

男「あんなに薄かった紙が、まさか月に届くなんてなぁ」

女「折ると紙の厚みは倍になるけど、倍が積み重なると、こんなにすごいことになるんだね！」

男「せっかく月まで届かせたんだ……この紙を登ってちょっと月まで行ってみないか？」

女「面白そう！　行こう行こう！」

女「できた！　お弁当完成！」

男「おほっ、うまそう！」ｻｯ

女「また食べちゃダーメ！」ﾊﾞｼｯ

男「あいてっ！」

女「それじゃお弁当持って、しゅっぱーつ！」

男「いざ月へ！」

男「大丈夫か？」

女「うん……平気」

女「月って遠いんだね……」

男「ああ……なにしろ38万キロだからな……」

女「フルマラソンよりずっと長いんだね……」

男「どうした？」

女「息が……苦しい……」

男「もう宇宙だからな……ほら、空気を詰めたペットボトルだ」

女「ありがとう」ｽｰｽｰ

男「さぁ、月までもう一息だ！　頑張れ！」

女「うん！」

女「着いたー！」

男「やったな！」

女「体が軽いね～」ﾌﾜｯ

男「なんたって重力は地球の1/6らしいからな」ﾌﾜｯ

男「だから体重も1/6になる。お前も体重を気にしなくて済むぞ！」

女「ちょっとぉ～、それセクハラ～！」

男「ハハッ、ごめんごめん！」

女「しようしよう！」

女「月から見た地球って、ホントに青いんだね～」

男「ああ……俺たちはあの青さをいつまでも保てるように、地球を大事にしなきゃいけないな」

女「今のあんた……かっこよかったよ」

男「へへっ、ありがとう！」

男「！」

女「どうしたの？」

男「あっちに……誰かいる！」

女「え、誰！？　アームストロングさん！？」

男「いや……違う！」

女「こんにちは……」

ウサギ「ん？」

かぐや姫「あなたたちは？」

男「俺たち、地球から来たものです」

かぐや姫「地球から？　まあ、はるばるご苦労様」

かぐや姫「私はかぐやよ。おもてなしはできないけど、ゆっくりしていって下さいな」

男「あ、あなたが！」

女「有名なかぐや姫さん！？」

男「はい有名ですよ！　多分日本人はみんな知ってます！」

女「五人の男に無茶振りしたクソビッチとして！」

かぐや姫「あの時は私も若かったから……」

ｱﾊﾊﾊﾊ…　ｵﾎﾎﾎﾎ…

かぐや姫「ドンって言い方はどうかと思うけど、まあそんなようなものね」

男「それがどうして、こんなところにいるんです？　まるでホームレスだ」

かぐや姫「ホームレスって言い方はどうかと思うけど、まあそんなようなものね」

ウサギ「実は……城を乗っ取られてしまったんだ」

男「乗っ取られた！？」

女「誰に！？」

ウサギ「他の星から来た……エイリアンどもさ」

ウサギ「何度か奪還しようとしたが……とても敵わなかった」

男「ひでえ……」

女「とんでもないワルだね……」

男「どうする？　このまま放っておけないよな」

女「うん、それにそのエイリアンども、このまま地球にも来る可能性あるし」

男「よぉーし」

男「かぐや姫さん、そのエイリアンども、俺たちが追い払ってやるよ！」

かぐや姫「ええっ！？」

ウサギ「武器を調達しなきゃ、とても歯が立たないぜ」

男「それもそうか……」

女「どこか、武器を調達できそうな場所ってないの？」

かぐや姫「あるとすれば、竹林ぐらいねえ」

かぐや姫「ほら、ここよ」

ウサギ「俺たちに残された最後の領地らしい領地だ」

男「へぇ～、いい竹があるじゃないか」

女「どうするの？」

男「決まってるだろ。これをヘシ折って……」ﾎﾞｷｯ

女「私は竹槍！」ｼﾞｬｷｰﾝｯ

かぐや姫「まあっ！」

ウサギ「こいつはすげえや！」

男「よっ、ほっ！　アバンストラッシュ！」ﾌﾞﾝﾌﾞﾝﾌﾞﾝ

女「いい感じ！」

男「待ってろよ、エイリアンども……月から追い出してやるぜ！」

ﾜｧｧｧ…

エイリアンA「なんだ？」

エイリアンB「またかぐや姫の軍勢か？」

エイリアンA「まさか……あれだけ叩きのめしてやったのに、来るわけが……」

男「ﾒｪｪｪｪｪｪｪﾝｯ!!!」

女「月突きィィィィィッ！！！」

エイリアンAB「うわあああああああああ！！！」

親玉「ん？」

エイリアンC「二人組が攻めてきて……次々と兵がやられています……！」

親玉「何者だ？」

エイリアンC「あ、あれは……サムライとヤマトナデシコ……」ｶﾞｸｯ

親玉「おい、しっかりしろ！」

女「とうとう追い詰めたわよ、親玉！」

親玉「ほう、刀と槍の使い手か……。アナクロニズムながら優秀な戦士たちのようだ」

親玉「だが、光線銃には敵うまい？」ﾁｬｯ

男「！」

親玉「死ねっ！」ﾊﾞｼｭｯ

ズガァァァァァンッ！

男「うおっ！」

女「きゃぁぁぁっ！」

女「どうする？」

男「竹じゃリーチが足りない！」

親玉「どうした、どうした！？　勇ましく攻め込んできたはいいが、打つ手なしかぁ！？」ﾊﾞｼｭｯ

ズガァァァァァンッ！

男「……くっ！」

男「こうなったらイチかバチか、ダッシュで近づくしかないか……」

女「そんなのただのいい的よ！」

男「だけど他に方法ないだろ！」

女「……ん？」ｺﾞｿｯ

女「ポケットの中に入ってたんだけど……これ使ったら？」

男「そ、そうか！　この手があったか！」

親玉「なにをこそこそやっている！？」

男「できた！　長さ38万キロの武器の完成だ！」ｼﾞｬｷﾝｯ

親玉「な、なんだと！？」

男「だけど、この長さだとさすがに扱いにくいな……」ﾌﾗﾌﾗ…

女「だったら、二人で持ちましょう！」ｶﾞｼｯ

男「ありがとう！」

女「私たちの攻撃、受けてみなさい！」

親玉「ま、待て！　や、やめろぉ！」

男＆女「うおおおおおおおおおおおおおおおおおっ！！！」

男＆女「38万キロ、アタァァァァァック！！！」ﾌﾞｵｵｵﾝｯ

ドゴォォォォォンッ！！！

親玉「ぐぴゃぁぁぁぁぁ……っ！」

――――

かぐや姫「エイリアンたちを追い出してくれてありがとう！」

男「いやいやいや」

女「どういたしまして」

かぐや姫「お礼にウサギたちが餅をついてるので、たっぷり食べてちょうだい！」

ウサギ「よいしょ、よいしょ」ﾍﾟｯﾀﾝﾍﾟｯﾀﾝ

女「おいしそー！」

男「いただきまーす！」

ﾓｸﾞﾓｸﾞ…　ﾊﾟｸﾊﾟｸ…

男「うまい！」

女「おいしー！」

ウサギ「そりゃあ、なんたってつきたてだからな！」

かぐや姫「あわてて食べて、ノドに詰まらせないでね」

男「どうもごちそうさまでした！」

女「おいしかったです！」

かぐや姫「あなたのお弁当もおいしかったわよ」

かぐや姫「また遊びに来てちょうだいね！」

男「はいっ！」

女「今度は十五夜にでも！」

男「久しぶりの地球だ……」

女「月の重力に慣れちゃったから、体が重いね～」

男「ちょっと体重はかってみるか」

女「そうだね」

男「――え！？」

女「――いやぁぁぁっ！」

女「いち、に、いち、に！」ｸﾞｯｸﾞｯ…

友人「あれ、お前ら二人してストレッチなんかやって、どうしたんだ？」

男「月で餅食いすぎて、だいぶ太っちゃって……」

女「二人でダイエット中～！　まずは準備運動から！」

男「紙を折ったら、自分の体を折る羽目になるとは……トホホ」

おわり