ペンギンに免じて付き合ってくれることなった。
まだ恋愛とか解らないしそういったものがこそばゆい年齢だったので、仲は良かったけどからかわれるのが嫌であまり嫁と遊ばなくなった
嫁はそういったことでからかわれるのが嫌いな真面目な性格、且つ根っからの恋話嫌いなので、俺のことが好きか聞かれると怒ってた
俺はそれが俺のことを嫌いな証だと思ってた
それはとても性格がいい子で、嫁も「あのこは優しくてしっかりしている子」だと認めていたくらいだった
俺はどうしていいのか解らなくて、返事もせずに逃げ出した
その子は恋愛感情を堂堂と出す子だったので、翌日には告白したことをクラス中に自ら喋っていた
嫁の反応が怖かったが、そんな噂を聞いても嫁はまゆ一つ動かさずいつも通りだった
ある日、朝皆が教室に集まっている時、その子は嫁の目の前で「私の告白、返事はどうなってるの?」と聞いてきた
しかも嫁に話しかけて「俺くんが返事くれないんだ、どうしてかな?」と聞いていた
嫁はその子にニコッと笑顔を向けてこちらを振り向いたが、その表情が無表情で背筋が凍りついたのを覚えている
チキンな俺はたまらずそのまま逃げ出した
結局その子とは中学が違ったので、返事を返さないまま卒業してやりすごした
中学生は思春期真っ只中で嫁のことはクラスが別れたことも有り、避け続けた
ふとした噂で嫁が二人の男性に好意を寄せられていることを知った
教室を覗くとその二人が嫁と一緒に話している場面に頻繁に出くわしたし、態度から好意を寄せまくっているのは簡単に解った
俺は二人との関係が気になって気になって仕方なくて、たまたま帰りに自転車置き場で一緒になった時、一緒に帰りながら聞いてみた
驚いたことに嫁は二人の男性の好意に全く気づいてなかった・・・
コレは後に俺と結婚して話すまで知らなかったので相当な鈍さだと思う
その後高校になってついに嫁と進路が別れてしまった
しかも嫁は高校進学と同時に引っ越してしまった
嫁と会えなくなってから俺も恋人ができたが、彼女がいるのに夢で嫁に会い、夢の中で告白し、目を覚ますと俺には彼女がいることを思い出し、複雑な感情にかられることを繰り返した
何故か夢の中で俺は小学生で、付き合ってた彼女の記憶も無かった
こんな経験した人他にいるんだろうか
本当に罪悪感と後悔が酷くて、夢のせいで暫く相当凹んだほど
そのうち彼女とも別れたんだが、必然というか偶然というか、成人式で彼女と再会した
気づいたら嫁の振り袖を引っ張っていた
とっさに引っ張ったせいで振り向いた嫁を見てビビってしまい、また昔のように逃げ出しそうになった
しかし、夢での後悔が積み重なっていた俺は、二度とあんな思いをしたくないと嫁に「成人式のあと、少し話せないか」と伝えた
振り袖を握っていた手が震えてきて、嫁がそれをそっと引き剥がした
「シワになっちゃうから」
俺は「ゴメン」としか言えず、嫁は「式の後は先約があるの」と言って立ち去ってしまった
俺は絶望のどん底だった
式の内容も話しかけてきた友達の記憶もぶっ飛んでるくらい頭が真っ白だった
式が終わった後、俺は最後まで席に残っていたが、周りに誰もいなくなったのでフラフラと外にでた
誰にも会いたくなくて建物の物陰に向かったんだか、そこで嫁の姿を見つけた
誰かと話してる様子だった
こっそり覗くと、見知らぬ男性
「卒業の時伝えたけどさ、やっぱり忘れられなくて」
もう嫌な予感しかしなかった
案の定告白だった
頭が真っ白で絶望のどん底だった俺は、もう何も考えずに嫁に歩み寄り、手を握って強引に連れ去ってしまった
当時の男性には本当に申し訳ないと思っている・・・
「一体何なの?」
と嫁は本気で怒っていたが、俺はそれどころじゃなかった
「もう無理だ、諦めきれない、二度と会えないかもしれないと思うと壊れそうだ」
なんかそんなことを口走った覚えがある、今思い返すと黒歴史
その後嫁は黙り込んでいたので俺も黙り込んでいた
15分ほどして駅についたが、宛もない
しかも嫁は振り袖、俺は燕尾服
嫁がさっさと歩きだしたので俺は反射的に後ろをついていった
そして会話のない、地獄のような3時間が始まる
嫁は振り袖のままショッピングを始めたのだ
喫茶店に入りコーヒーを嗜み、アクセサリーショップで簪を買い、手芸店でぬいぐるみのキットのようなものを買い、更に男が入りにくいような可愛い小物店的な所でずーっとぬいぐるみを眺めていた
「なにしてるの」
「どの子が一番可愛いかしら」
同じしろくまのぬいぐるみを眺めて吟味していた
俺にはどれも同じ顔なんだが・・・
20分程その店でいろいろ吟味した挙句、ひとつのしろくまを選んでレジへ
自分用かと思ったらラッピングしてもらっていた
妹にあげるらしい
そういえば嫁が好きなのはペンギンだった
俺はラッピングを待つ嫁の手を引っ張ってペンギンの並んでいる棚に向かった 
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「好きなのかってやる」
怪訝な顔をされたので「いいから選べって!」と無理矢理選ばせた
途中七千円と札の出ている巨大なペンギンを手にしたので内心冷や冷やしたことは死んでも内緒
結局700円くらいの手のひらサイズのペンギンを選んだ
こちらもラッピングしてもらって嫁に渡したが、帰りの電車に乗るなりあっという間にラッピングを剥がされた
嫁は袋を結んでいたピンクのりぼんをペンギンに結び、ペンギンの羽をクイクイっと動かし、腹話術のように「カッコイイだろ!!」と喋らせて俺にアピールしてきた
その瞬間緊張感がとけて、電車の中なのに泣きながら爆笑してしまった
ついに嫁の降りる駅につき、俺は一緒に降りて改札まで付き添った
最後の最後で携帯の連絡先を聞いたら
「私携帯持ってない」発言
おい・・・俺たち腐っても平成と昭和のはざま生まれの世代だぞ、今時持ってないなんて嘘信じる奴がいると思うのか
ここまできてそれで引き下がるわけにもいかず、どうにかしろと脳内で様々な考えが巡っていると、嫁が
「スカイプならしてるよ」
とIDを伝えてきた
家に帰るなりパソコンでスカイプをDLし、嫁とコンタクトを取った
ちなみにマジで嫁は携帯を持っていなかったので、後に俺が自腹で買い与えた
コンタクトを取ってからは早かった
付き合っている人がいないなら付き合ってくれと懇願、ペンギンに免じて付き合ってくれることに
そこから俺がベタぼれ、嫁の大卒のタイミングでペンギンにつけた指輪を渡してプロポーズ
指輪よりペンギンに喜んだのは言うまでもない
やはりペンギンに免じてプロポーズを受けてくれた
きっと俺よりペンギンの方が好きなんだろうと思うけど、それでも俺のことを大切にしてくれるのが伝わるので幸せだ
末長くお幸せにな!
嫁さんにペンギンと末永くお幸せに~
わからないな
あんまりそんな話をしたことない
小学校の頃のこともクチに出さないし、なんか俺は触れちゃいけない話題かなと思ってる
聞いてみてよ
読みやすかったよ、GJ
聞くときはペンギンの腹話術でどうかね
前に嫁にプレゼントしたペンギン、無意識に指で頭ペシペシしてたら、いつの間にか後ろに立っていた嫁に鬼の形相で睨まれてた・・・
俺死んじゃう
喜ぶと思って最近店先でみかけたデカイペンギン抱きまくら買ったところなんだ
・・・俺の寝るスペースがペンギンにとられた
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